ぶどう品種の特性

品種説明

日本の主要品種の一つ。ぶどうの王様と呼ばれ消費者に人気が高く、栽培面積第1位になる勢いである。巨峰は1937年に大井上康氏がキャンベルの巨大変異種である石原早生に、ロザキの巨大変異であるセンテニアルを交配して作出した4倍体品種。果房は円錐形大房、350~450g程度に整房する。開花前に房作りしないと花流れし易い(本種の栽培は専門知識を要す。栽培技術書必読のこと)。楕円形巨大粒で11~13g標準だが大粒は15g以上になる。紫黒色、果粉が多く美しい。肉質は欧州種に近く緊まり、果皮と果肉の分離は中程度、種ばなれよく、やや多汁で糖度高く18度を超え、酸味が適度で上品な香りがあり、食味は極めて良好で日本人好みである。裂果はあまりないが栽培条件によっては多雨で裂果することもある。日持ちは欧州雑種としては良いが、穂軸が萎縮し易く、脱粒し易い欠点がある。熟期は8月中旬~9月下旬で、結果量により幅が広い。ジベ処理による種なし巨峰は熟期が早まり評判がよい。

1957年に井川秀雄氏が交配、作出した品種。1973年10月に品種登録された。巨峰群中、最高の品質とボリュームを持ち、ジャンボぶどうと称される。果房は巨峰より大きいが房作りして350~400gとする。実止まりは巨峰より難しく技術を要す。果粒は巨峰より大きい巨大粒14~20g最大24g、外観壮観。光沢のある透明度の高い紫黒色、着色はよいが、夜温が高いと赤味が残り完全に着色しない。被覆栽培して促進させ、夜温が低い時期に成熟すると着色がよく、このためハウス栽培が盛んである。果粉が多く果皮は強く裂果は少ない。果肉は巨峰より緊まり、食味は濃厚で糖度は16~21度。果芯は長く果梗が強く巨峰の欠点とされている日持ち、脱粒性が改良されている。熟期は8月下旬で巨峰よりやや遅い。樹勢が極めて旺盛で、弱剪定が良い。巨峰より欧州系に近く、耐病性はやや弱い。適地は巨峰と同じだが温度に恵まれ日照の多い地域がよい。ジベ処理による無核化が容易で、果粒も最大20gに達している。このため、種無し化が盛んになり、ピオーネの人気がリバイバルして、増殖されている。

ニューヨーク農試作出、1925年に交配し、1945年に発表された。驚くほど甘い米国品種で、日本には1954年に導入され、人気が上昇した。べリーAを小房にしたような円筒~円錐形中房で300g程度。実止まりよくやや密着。円形中粒3~5g、糖度が極めて高く18~23度に達し、酸が少なく蜂蜜に似た甘味を持ちミルズに近い香りがあり、消費者に好評を得ている。暗紫赤~紫黒色で果粉厚く、美麗、着色極めて容易。果皮は強く、裂果はない。果肉はやや軟らかく多汁。肉質はなめらかで品質よく、果皮と果肉の分離は容易。棚持ち、日持ちも良好。耐病性強く、豊産である。熟期は8月下旬の中生種。樹勢は中で、若木は旺盛であるが樹冠はそれほど拡大しない。耐寒性は弱く、凍害を受け易い欠点があるので、結果過多を避け、枝の充実を図り、貯蔵養分を高めて越冬させることが大切です。

本種は新潟県の田野寛一氏の交配作出品種(発表は昭和30年。栽培容易な豊産種として人気がある。円錐形甚大房600g以上。楕円形甚大粒6~9g最大12g。紫紅色で着色良好、外観よくボリュームがある。花流れ性は全くなく実止まりが最も安定しているが、欠点は密着しかなりの適粒労力を要すること。肉質は中の上、ラブラスカ香があり果肉は柔軟で多汁、糖度は16~18度。果皮と果肉の分離は容易。裂果、脱粒なく、果皮が強く輸送性がある。熟期は8月下旬の中生。樹勢強く耐病性、耐寒性も強い。

白根市の渡辺氏の作出で、熟樹は9月下旬で樹勢旺盛、花流れ性なく大房、果粒は亜形、暗赤黒色でブルーム(果粉)多く美しい。糖度は17~19度で上品で裂果はない。

山梨県の上原正蔵氏作出の最高傑作で、1955年に交配し、59年に初結果した。本種は品質が優れているが栽培が難しく、安定栽培技術の確立まで長期間試作を続け、1977年にようやく登録品種になった。本種は日本の気象下で栽培できる「赤いマスカット」と呼べる純粋欧州種であり、その最大の理由は降雨による裂果がないことである。円錐形甚大房400~600g。先尖卵形甚大粒8~16g花流れ少なく、適粒はネオマスカットよりはるかに容易。明るい鮮紅色、外観優美で花のように美しい。果粉は多く、果皮は強く裂果しない。果芯が太く種子に届くまで深く、脱粒しない。貯蔵性、輸送性もブドウの中で最も強いものの一つ。果肉は崩解性で、欧州種としてはやや軟らかく多汁である。果皮と果肉は分離しないので、一部、皮を剥いて食べるとよい。糖度は極めて高く18~23度で上品なマスカット香がある。品質は最高、独特のコクと甘みをもち、消費者アンケートによる人気第一位である。熟期は晩生で9月下旬から。

1976年山梨県植原葡萄研究所作出。円錐形大房、房作りして400~600g、粒着よく、房当り40粒程度に適粒する。楕円形巨大粒8~16g。外観は優美でロザキに似るが、果粒はアレキに似て先端の方が太い倒卵形粒。緑黄色~白黄色、完熟してもロザキのような褐色の斑点がなく美しい。肉質は崩解性でややしまり、ロザキに似てまろやかで多汁。果皮は薄いが強く裂果はほとんどない。果皮と果肉の分離は難。食味よく上品で品質は極上。糖度は極めて高く20~22度に達し、実に旨い。酸は少なく香りはない。熟期は9月中旬~果梗は太くないが、脱粒なく、輸送、貯蔵性は強い。樹勢は旺盛、欠点は萌芽が遅くむらであること。徒長枝程この傾向が強い。落ち着いて技梢が小指以下の手頃な大きさになれば萌芽は揃う。樹冠を速やかに拡大して、少肥栽培、弱剪定等により樹勢を落ち着かせること。敵地は広く山形以南の排水良好地で、ネオマスカットが栽培できる地帯。

シャインマスカットは安芸津21号と白南の交配により誕生した品種で、2006年に品種登録された新しい品種の白ぶどう。安芸津21号はぶどうの女王と呼ばれるマスカット・オブ・アレキサンドリアを親にしており、シャインマスカットはその食味・食感を受け継いでいる。マスカット・オブ・アレキサンドリアと比べると栽培が容易なため、新品種にも関わらず生産量は増加している。果肉は黄緑色で大きさは巨峰と同程度の約12g、種がなく肉質が崩壊性で硬いため噛み切りやすい。皮ごと食べることもでき、パリっとした食感の後にジューシーな果肉を楽しめる。収穫は遅い時期であれば10月初旬まで、通常は8月から9月下旬に市場に出回っている。市場に出回る量が増えたとはいえ、女性人気や贈答用などへの需要は高まっており高価格のマスカットも人気がある。シャインマスカットは栄養を多く含んだフルーツとしても人気であり、ビタミンB1・B2、ミネラルまで多くの栄養を摂取できる。

山梨県の植原葡萄研究所が1983年にレッドクイーン、伊豆錦を交配・選抜し1988年に初結果した。名前は1980年代に旧ソ連の指導者だったゴルバチョフ氏の愛称で、氏が初来日した1983年に登録されたことが由来になっている。果皮は美しい鮮紅色で大粒の種なしぶどうとして人気が高く、糖度は20度を超えて濃い甘さがあり、酸味は少なくさっぱりとした味わいを楽しめる。果肉は崩壊性と塊状の中間で、しっかりとした歯ごたえがある。ゴルビーは皮が少し厚めになっており、皮ごと食べるのではなくあらかじめ皮を剥いておくと果肉を残さず食べることができる。旬は8月の下旬から9月の上旬で、他のぶどうと比べ出荷量も少なく旬の期間も短いため店頭ではなかなかお目にかかれない。賞味期限は常温で約2~3日、冷蔵で約5日となっており、冷蔵庫を使う場合は一房ずつ紙やラップで包むかポリ袋に入れて保存する。良質なゴルビーは全体が濃い赤で色づいたものになっている。

クイーンニーナはブドウ安芸津20号と安芸クイーンを1992年に交配、選抜し2011年に品種登録された新しい品種。名称のニーナは旧系統名である安芸津27号の27と、スペイン語で女の子を意味するNINA(ニーニャ)に由来する。巨峰よりやや遅い時期に収穫されジベレリン処理によって種なし栽培も可能。果皮はルビーのような赤色で、果粒の大きさは約17gと大粒と見た目にもインパクトがあり美しいぶどうとして人気が高まっている果肉の特徴はフォクシー香と呼ばれる独特な甘い香りがあり、肉質は崩壊性で噛み切りやすく硬い。糖度は21%以上で酸味は低いので、強い甘味を楽しめる。皮の剥きやすさは巨峰と同程度でやや剥きにくいが、果肉の質感があり皮ごと食べても十分美味しい。クイーンニーナの旬は8月下旬から9月上旬頃で、近年になって誕生した品種のため栽培面積・収穫量ともに少なく希少性は高い。